『ビジネスガイド』提携

違反タイプ別に解説!
近時の最低賃金法違反にまつわる指導・トラブル事例と実務のポイント (4/4ページ)

特定社会保険労務士 角森 洋子

2015/3/26

(3)タイプ3:制度に関する知識不足による違反

ア 技術習得中

違反事例
上記品川労働基準監督署の監督結果にもある通り、経営者が「修業中の者には最賃額が適用されないと考えていた」というケースは、洋菓子店や飲食店に限らず、理・美容業でも同様の傾向が見られます。技術の習得に何年もかかるという業種では、このような誤解があります。

イ 減額特例の対象であるにもかかわらず手続きをしていないもの

違反事例
厚生労働省が公表した資料によれば、平成25年度における使用者による障害者虐待と認められた事業所への措置は389件で、内訳は以下の通り。
分 類件 数
[1] 労働基準関係法令に基づく指導等 341
(うち最低賃金法関係308件)
[2] 障害者雇用促進法に基づく助言・指導 37
[3] 男女雇用機会均等法に基づく助言・指導 2
[4] 個別労働紛争解決促進法に基づく助言・指導等 9

上記[1]の具体例として、次のものが挙げられている。

  • 障害者である労働者に、最低賃金額を下回る賃金を支払っていたため、事業主に対して、是正指導を行った。
  • 障害者である労働者に、時間外労働をさせていたにもかかわらず、割増賃金を支払っていなかったため、事業主に対して、是正指導を行った。
  • 都道府県労働局長から最低賃金の減額特例許可を受けている障害者である労働者に、許可の有効期間が切れているにもかかわらず、最低賃金額を下回る賃金を支払っていたため、事業主に対して、是正指導を行った(下線は筆者)。
(2014年7月18日報道発表、平成25年度『使用者による障害者虐待の状況等』の取りまとめ結果参照)
photo

上記のように、障害者を使用している場合で、減額特例制度を知らずに、許可を受けることなく、最低賃金額未満を支払っているケースがあります。あるいは、障害者を常に最低賃金額で使用している場合に、賃金の計算期間の途中で最低賃金額が引き上げられていることを知らずに、最低賃金額未満で使用しているというケースがあります。さらに、減額特例許可には有効期限があり、更新が必要ですが、それを知らずに期限切れとなった後も更新手続をしていないというケースがあります。

〈最低賃金額との比較の方法〉
支払われる賃金が最低賃金額以上となっているかどうかを調べるには、最低賃金の対象となる賃金額と適用される最低賃金額を、以下の方法で比較します。

[1]時間給制の場合
 時間給≧最低賃金額(時間額)
[2]日給制の場合
  日給÷1日の所定労働時間≧最低賃金額(時間額)
  ただし、日額が定められている特定(産業別)最低賃金が適用される場合には、 
日給≧最低賃金額(日額)
[3]月給制の場合
  月給÷1カ月平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額)
[4]出来高払制その他の請負制によって定められた賃金の場合
出来高払制その他の請負制によって計算された賃金の総額を、当該賃金計算期間に出来高払制その他の請負制によって労働した総労働時間数で除して時間当たりの金額に換算し、最低賃金額(時間額)と比較します。

〈減額特例許可〉
修行中であっても、減額特例の許可の対象となるのは職業能力開発促進法24条1項の認定を受けて行われる職業訓練のみであり(前述2参照)、かつ、労働局長の許可を必要とします。これ以外は、修行中であっても最低賃金額以上の賃金を支払わなければなりません。同様に、障害者であっても、減額特例許可を受けない限り、障害があるということだけをもって最低賃金額未満の賃金で就労させることはできないのでご注意ください。

ビジネスガイド表紙
『ビジネスガイド』は、昭和40年5月創刊の労働・社会保険の官庁手続、人事労務の法律実務を中心とした月刊誌(毎月10日発売)です。企業の総務・人事・労務担当者や社会保険労務士等を読者対象とし、労基法・労災保険・雇用保険・健康保険・公的年金にまつわる手続実務、助成金の改正内容と申請手続、法改正に対応した就業規則の見直し方、労働関係裁判例の実務への影響、人事・賃金制度の構築等について、最新かつ正確な情報をもとに解説しています。ここでは、2015年2月号の記事「近時の最低賃金法違反にまつわる指導・トラブル事例と実務のポイント」を掲載します。『ビジネスガイド』の詳細は、日本法令ホームページへ。

かくもり・ようこ●特定社会保険労務士、労働衛生コンサルタント。「神戸元町労務管理サポート」代表、元労働基準監督官、兵庫産業保健総合支援センター相談員、NPO 法人障害年金支援ネットワーク理事。著書に、『改訂 労働基準監督署への対応と職場改善』(2010 年、労働調査会)、『新版 新・労働法実務相談(第2版)」(共著、2014年、労務行政)がある


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