人事マネジメント「解体新書」

組織の活性化、従業員のモチベーションを向上させる「表彰制度」
その実態と、制度導入・運用のポイント【前編】 (1/3ページ)

2013/10/28
「人事制度」にはメインとなる賃金・評価とは別に、サブシステムとして、組織の活性化・従業員のモチベーション向上につなげるためのいくつかの制度がある。「表彰制度」はその代表格の一つだが、そのあり方は多岐に渡っている。果たして、「表彰制度」にはどのようなものがあるのか。また、制度導入・運用にあたってどういう点に留意していけばいいのか。そのポイントについて、紹介していく。
「表彰制度」とは何か?
◆コアとなる「人事制度」とは趣を異にし、組織の活性化、従業員のモチベーションを向上させる

経営を取り巻く環境が多様化、複雑化する昨今、多くの企業では経営戦略に対応する人事制度をさまざまな形で模索しているが、なかなか有効な制度・施策を打ち出せていない状況だ。さらに、報酬としての賃金が伸び悩む中、いかに組織を活性化させ、従業員にやる気を持ってもらい生産性を向上させていくかが、人事マネジメント上の大きな課題として浮上している。そうした中で近年、人事制度のカテゴリーではサブシステムとして位置づけられる「表彰制度」に注目が集まっている。定番としての「永年勤続表彰」や「改善提案表彰」「社内コンテスト」のほか、最近では「環境・エコ活動への表彰」など、さまざまな形態が取り入れられている。

「表彰制度」には特に定まった定義はないが、その性格からいって、従業員に与えようとしている「報酬」は金銭や役職よりも、「感謝」「認知(承認)」である。金銭的な報酬に重きを置くものは、「報奨金制度(インセンティブ)」として、別のものであると考えたほうがいい。本稿で解説する「表彰制度」も、基本的に感謝・認知(承認)に主眼を置くものを対象とする。ちなみに、労務行政研究所が2010年に実施した「表彰制度の最新実態」によると、企業が実施している各種表彰制度について、以下のように定義している。

■図表1:「表彰制度」の定義
永年勤続表彰 一定年数以上の勤続者に対する表彰
定年退職表彰 定年到達者に対する表彰
改善提案表彰 会社の事業や業務に関する着想、改善意見の提案(実行)を行った社員・グループに対する表彰
営業優秀者表彰 一定期間中に優秀な成績・成果を上げた営業担当の社員・グループに対する表彰
職務発明・考案表彰 新製品・技術の開発、従来製品の改良など、業務上有益な発明考案や特許・意匠登録を申請した社員・グループに対する表彰
善行表彰 人命救助や社会奉仕などで公的機関から表彰を受けたり、他の従業員の模範となるような行為のあった社員・グループに対する表彰
災害時功労表彰 事業所内での災害・盗難などに際し、人命救助・会社財産の保全などで顕著な働きをした社員・グループに対する表彰
無事故・無災害表彰 一定期間無事故、安全運転などで勤務実績の良好な社員・グループに対する表彰
技能表彰 優秀な技能を持つ社員・グループに対する表彰
社名啓発表彰 スポーツなどにより優秀な成績を上げ、会社の名誉となる功労をした者・グループに対する表彰

これを見ると、必ずしも職務に関連するものばかりではないことがわかる。職務以外のものでも、「表彰制度」の対象に十分なり得るのだ。また、特別な功績を上げた場合だけにも限らない。地道に努力してきた結果や、本人の努力次第で表彰されるチャンスがあるものも少なくない。そして、その対象は個人だけでなく、組織やインフォーマルなグループも含まれる。運営母体にしても、全社レベルで運営するものあれば、部門レベルで運営するものある。つまり、多様な形で存在することが、「表彰制度」の大きな特徴である。誰にでも表彰されるチャンスがある、だからそれぞれの立場、持ち味を活かして頑張って働こうとする、こういう効果・効用が「表彰制度」には期待できるのである。

◆周囲に認められることによって「自己効力(有能)感」を得る

従業員のやる気を促し、組織を活性化させ、生産性を向上させるために、かつては「年功序列」的な処遇、そしてバブル崩壊後は「成果主義」的な処遇がもてはやされた。しかし現在のように、グローバル間での競争が激化し、持続的・安定的な成長戦略が描けなくなっている状況下では、大幅な給与の引き上げやボーナスの支給などは難しい。また、役職やポストも組織のスリム化・フラット化の進行で大幅に減少し、まじめに努力していればそれなりのポストに就けるといった時代ではなくなっている。しかし、個人のやる気の有無が組織の業績に直結することに、異論をはさむ人はいないだろう。だからこそ、給与・賞与や役職・ポストというインセンティブが効果的でなくなっている現在、どうしたら従業員のやる気を高めていくことができるのか、その方法を各企業が模索しているのだ。そうした中で、感謝・認知(承認)に訴える「表彰制度」の存在が浮上してきたのである。

賃金はそれによって動機づけられるというより、不足していたり不公平だったりした時に不満をもたらす要因となることは、ハーズバーグの「動機づけ・衛生理論」でも指摘されている。そうした金銭的な「衛生要因」ではなく、感謝・認知(承認)などによる「動機づけ要因」を効果的に活用していけば、働く人のモチベーションは持続的・継続的に働くようになる。特に、日本人はこの傾向が強いように思う。というのも、日本人は周囲の人との人間関係を重視し、周囲の人の目を通して自分を評価し、人間関係の中での態度や行動を決めていくことが多いからだ。単に目標を達成するだけではなく、それが周囲に認められることによって初めて、「自己効力(有能)感」を得るのが日本人の特徴と言えるだろう。そのような効果・効用が理解・浸透されてきたことで、多くの企業で従業員をほめたり、認めたりする取り組みである「表彰制度」が行われるようになってきたのだ。



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