現場重視で変化に適応し、事業拡大
社会的なインフラとしての人材サービス企業へ

テンプホールディングス株式会社

水田正道さん

水田正道さん

1973年のテンプスタッフ株式会社創業以来、40年以上にわたり日本の人材派遣業界をけん引し、今や総合人材サービス企業として成長を遂げたテンプグループ。1993年から海外展開を開始し、2002年にはアメリカの人材事業大手のケリーサービスと事業提携、その後もアジアを中心に積極的にグローバル展開を図っています。一方で、さまざまな企業のM&Aにより事業を拡大。2013年4月にはインテリジェンスホールディングスを子会社化し、大きな話題となりました。そんな同グループを、1988年テンプスタッフ入社以来、営業の最前線で支えてきた水田正道さん。まだ人材派遣がどういう事業なのか知られていなかった時代から、前社長・篠原欣子さんとともに雇用の課題に取り組み、2013年6月に代表取締役に就任しました。現場第一を貫き、今も積極的に営業同行する水田さんに、これまでのテンプスタッフの歩みや総合人材サービステンプグループを率いる現在の心境、お考えなどを伺いました。

Profile
水田正道さん
テンプホールディングス株式会社 代表取締役社長

みずた・まさみち/1959年、東京都出身。1984年、青山学院大学経営学部卒業後、株式会社リクルート入社。1988年、営業先の一つだったテンプスタッフ株式会社に転職。川崎支店から始め、営業畑一筋。2013年6月、テンプホールディングスおよびテンプスタッフ代表取締役社長就任。一般社団法人日本人材派遣協会会長、一般社団法人人材サービス産業協議会理事、人材派遣健康保険組合理事も務める。座右の銘は、「積小為大」。

合理性の高いビジネスに、将来性を見出す

 1988年、当時リクルートで営業をされていた水田社長が、テンプスタッフに転職された経緯を教えていただけますか?

当時、リクルートの営業先の一つがテンプスタッフでした。女性ばかりの会社で、事業内容も当時としては非常にユニークなものでした。直観的に、このビジネスは必ず成長する、世の中に必要不可欠となるサービスだと感じました。

1980年代後半は、日本企業が終身雇用・年功序列を基盤に、着実に成長していった時代の成熟局面でしたが、新卒採用が当たり前で、中途採用は一般的ではありませんでした。転職情報を扱うリクルートの『就職情報』や『とらばーゆ』などの求人誌は発行されていましたが、ニーズがあったのは外資系企業やベンチャー企業が中心で、今のように大企業が中途採用を行うなんてあり得ない時代でした。

水田正道さん インタビュー photo

でも、私は、そのような環境に疑問を抱いていました。年功序列賃金制度や事業の繁閑に適応しない採用手法は、企業経営にとり、合理性がないのではないかと。繁忙期に合わせ柔軟に人材を採用できる人材派遣は、非常に合理的な仕組みだと思いました。また個人側にも、自分のキャリアステージに合わせた新しい働き方として、派遣は受け入れられると、スタッフの方と話しても実感しました。合理性のあるビジネスは成長します。それで、人材派遣は成長すると直観したんです。

一方で、いま思えばテンプスタッフ自体、設立15年が経過して新しい局面にさしかかっていました。競合も増え、女性ばかりの組織から、男性の社員を入れて新たな攻めの営業を展開しようとしていた。たまたまそこに、私がいたという感じでしょうか。

さらに、私が転職を決意した理由の一つに、トップだった篠原欣子(現・取締役会長)となぜか馬が合ったという点も挙げられます。何となくですが、「この人とならうまくいく」と感じました。ビジネスに成長性があって、トップと馬が合う。転職することに迷いはありませんでした。

 転職されてみて、当時の人材派遣業界での仕事はいかがでしたか?

もちろん、最初は大変でした。当時、「リクルートです」と言えば、大体わかってもらえましたが、「テンプスタッフです」と言っても、「郵便局?」とか「天ぷら屋?」とか。打ち上げでお店を予約していて行ってみたら「テンポスタンポ」なんて書いてあったり(笑)。社名だけではなく、「そもそも人材派遣とは」という説明からしなければならなかったので、まずはサービス内容を理解していただくのが大変でした。

しかし、私自身は、この業界は絶対に伸びるという確信を持っていましたので、決して辛くはありませんでした。先々のイメージを考えて動くことができましたので。実際、外資系企業や多くの人材を必要としている通信キャリアやクレジット業界などでは、このサービスは浸透しはじめていましたし、「忙しいときに頼めるのは、いいサービスだね」と言ってくださる企業が着実に増えてきていました。そういう反応を目の当たりにして、人材派遣ビジネスの成長を、実感を伴って確信することができました。

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